ぴあ's profileニューヨーク通信PhotosBlogLists Tools Help

Blog


    5/17/2005

    暗証番号

    ここ半年ほど ある『暗証番号』を打ち込むたび、全身に緊張感がみなぎる。

    『防犯アラーム』のそれだ。

     

    貴重品とは無縁の我家だが、

    警備会社に直結した『防犯アラーム』が設置してある。

    ニューヨークやワシントンDCといった犯罪多発都市に住みながら、

    この十数年間で盗難らしき被害にあったのはただ1度。

    駐車場に停めてあった愛車の窓が割られたのだが、

    価値のあるものは一切持ちあわせていなかったため、

    相手の徒労と我家の窓ガラス交換による出費のみに終わった。

     

    だからと言って油断していたわけではないが、

    新居に設置されていた『防犯アラーム』も作動させることなく月日が過ぎた。

     

    ところがある日、わがコンドミニアムの管理会社から通知が届いた。

    「去る××月○○日および△△日、皆さんのコンドミニアムで盗難が2件あった旨、

    地元警察より報告を受けました。

    皆さんのお宅も十分注意し、不審な者を見かけたらすぐ警察に通報して下さい。」

     

    突然のことに驚き、

    早速わがコンドミニアムの噂に精通している近所のおじさんに事情を聞いた。

     

    ①盗難にあったのは□□さんと◎◎さんという隣同士の2件。

    ②どちらも事件発生は夜の8時~10時ごろ。

    トラックか大型のバンで乗りつけ、引越しを装って荷物を運び出したと思われる。

    ③2件とも侵入は玄関口から。

    1件は鍵をこじ開け、もう1件はドアが蹴り倒された模様。

    ④時間がなかったのか1件は高価な電化製品のみ盗まれ、

    もう1件は家具ごと全て盗まれた。

    ⑤その夜たまたま出かけていた家と、マイアミに旅行中だった家が狙われたことから、

    この2家族の行動を予め知っていた者による犯行と思われる。

     

    と、まるで刑事のごとく詳細を語るおじさんから、

    噂にしては詳しすぎる情報を入手した。

     

    この事件(とおじさんの噂話)がキッカケとなり、

    わがコンドミニアムの住民は一斉に『防犯アラーム』を稼働させ、

    その証(アラーム会社のシールや立て札等)を表に掲示した。

     

    このアラームをセットする外出時、および解除する帰宅時に打ち込むのが

    問題の『暗証番号』。

    ただでさえ多種多様な『暗証番号』が氾濫する現代社会。

    記憶の片隅にまた新たな番号を加えなければならないのが憂鬱だったが、

    愛娘(猫)の安全を第一に考え、

    これまで全く使ったことのない数字の組み合わせを選んでみた。

    毎日朝晩繰り返すうち、

    頭ではなく『指』がその場所を覚えるようになっていった。

     

    そして半年前。

    アラームを稼働させてから初めて日本へ里帰りしてきた後のこと。

    2週間の旅を終え、時差ボケと疲労でボーッとしたまま玄関ドアを開けた。

    “ピッ!” “ピッ!”という音によって、

    すっかり忘れていた『防犯アラーム』の存在を思い出した。

    反射的に『指』が動き出し、何やら番号を打ち込んだ。

    その途端、それまでの穏やかな“ピッ!”“ピッ!”が警戒をおびた

    “ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!…”という小刻みな継続音に変化した。

    まるで時限爆弾を手にしたがごとく、眠っていた脳ミソがようやく動き始めた。

    「マズっ!間違えたっ!」

    しかしそう思った瞬間、

    自己主張と思い込みの激しい私の『指』はまたしても勝手に動き出し、

    たて続けに何種類かの番号を打ち込んだ。

    “ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!…”警告は鳴り止まない。

    ここで脳ミソがようやく主導権を回復し、

    番号の並ぶパネルを凝視して正しい組合せを思い出そうとした。

    しかし、たった2週間の旅が、頭の中のメモリーまですっかり空白にしていた。

    「番号が出てこない・・・」

    旅の疲れも吹っ飛んで、凍りついたように立ちすくむ私をあざ笑うかのように、

    アラームはとうとう『時間切れ』を宣告。

    これまでとはうって変わった、耳をつんざくような警報が鳴り響いた。

     

    “ウイ~ン!ウイ~ン!ウイ~ン!…”

     

    あまりの爆音に耐え切れず、とりあえず外に出てドアを閉めた。

    バックの中から電子手帳を取り出し、

    暗証番号に関するメモを探したが何も見つからない。

    ・・・安全対策として何処にもメモしなかったことを思い出す。

     

    自分以外に唯一『暗証番号』を知るダンナをつかまえようと携帯で呼びだす。

    ・・・つかまらない。

     

    時刻は夕方6時前後。

    深夜でなかったことを感謝しつつも、爆音はご近所にも筒抜け。

    とうとうお隣りのご主人が顔を出した。

    「どうしたの?」

    「うるさくてゴメンなさい!

     旅行から帰ってきたら、アラームの暗証番号を忘れちゃったの。」

    あせって謝る私に彼は

    「はははっ!そうだったの。グッドラック!」

    と言い残してさっさと自宅のドアを閉めた。

    “それだけかいっ!”と思いつつ、彼には何もできないことを悟る私。

     

    そこへ待ちに待ったダンナからの電話。

    「どうした?」

    早口で現状を伝え

    「で、暗証番号何だっけ?」と問う私に

    「・・・何番だったっけなぁ。」

    なんと夫婦そろって『頭』ではなく、『指』で番号を覚えていたのだ。

    とっさの質問に電話のむこうで『指』を動かしながら番号を探っているダンナ。

    結局『指』だけに頼ってきた彼の当てずっぽうな組み合わせも

    全て不正解に終わった。

     

    鳴り止まぬ爆音を前にますますあせる私の視界に入ってきたのが

    ・・・パトカーだった!

    まったく役にたたなかったダンナとの会話を切りあげ、

    我家に向かって直進して来るパトカーを恐る恐る見つめた。

    注意深く乗りつけたパトカーの運転席から静かに降り立ち、

    腰に手をあてながらゆっくりと我家の玄関先に歩み寄る1人の警官。

    アラームの鳴り響くアパートの玄関前に立ちつくす私を見つけると、

    その表情を一切変えることなくじっと私の目を見つめ、

    3メートルほどの距離まで近づくと立ち止まった。

     

    “警察沙汰になってしまった!”と内心あせりながらも、

    “これでなんとかこの音から解放される!”と安堵した私。

     

    思いっきり笑みを浮かべ

    「ああ、お巡りさん!来てくれてよかった!

     たった今、旅行から帰ってきたんですけど、

     アラームの番号を忘れてしまって困ってたんです!」

    「あなたはこの家の住人ですか?」

    「もちろんそうです。」

    「念のため、氏名と住所を教えて下さい。」

    「はい。XXXXXXXXXXです。」

    「ちょっと待ってて下さい。」

    と言うと、無線を通じて誰かと連絡を取り、

    その後ようやくアラームのごう音が鳴り止んだ。

     

    若い優しげな顔立ちの男性だったこともあり、感謝の気持ちが頂点に達した私。

    「本当にありがとうございました!助かりました。

     警察の方がこんなに早く駆けつけて下さることもわかって

     とても安心しましたし、嬉しかったです。どうもありがとう。」

    と自分でも驚くほどスラスラとお礼の言葉が出てきた。

     

    後日アメリカ人の友達から聞いた話によると、

    これがもし他の街であれば、

    不注意で警官を呼び出したとして罰金請求が来ていたとか。

     

    そして当日、我家の警備会社は、

    何かの間違いでないことを確認すべく、

    私やダンナの携帯を通じて確認を取ろうとしていた。

    しかし、当人たちが無駄な会話に熱中していたため確認が取れず、

    マニュアル通りに「何者かが侵入したおそれアリ」

    と警察に通報したらしい。

     

    長旅から戻った母を迎えに出てくれた愛娘(猫)は、

    このあとしばらくの間、口をきいてくれなかった。

    5/8/2005

    NYタクシー事情

    ニューヨークのタクシー運賃は、詳細が決まっているようでそうでもない。

    たとえばメーターの料金システム。

    初乗り運賃=$2.50

    1ユニット(*)あたりの追加料金=$0.40

     (*)1ユニット= 時速6マイル以上で走行中の場合、5分の1マイル

              時速6マイル未満で走行中の場合、120秒

    1分あたりの待ち時間追加料金=$0.40

    夜間(午後8時~朝6時)割増料金=$0.50

    ラッシュ時(月~金曜日の午後4時~午後8時)割増料金=$1.00

    とここまではまだいい。

     

    だが、日本との往復にもよく使われるJohn F. Kennedy International Airport

    何年か前に『JFKからマンハッタン』までの運賃は$45.00+トンネルや橋の料金代と定められたことにより、

    空港からマンハッタンまでの乗入れ料金は非常に明快になった。

    しかし『マンハッタンからJFK』までの運賃は、何故か通常通りメーター料金が課せられる。

    マンハッタンを訪れる者には良心的な定額制を掲げ、

    出てゆく者からはメーター制でできるだけしぼり取るという作戦だ。

     

    また国内線でよく使われる近場の空港LaGuardia International Airport

    こことの往復は完全にメーター制。

     

    そしてハドソン川を挟んだニュージャージー州に位置する国際空港Newark International Airportの場合、

    『ニューヨーク市内から空港』まではメーター料金+$15.00+トンネルや橋の料金代となんだかあやふや。

    一方、空港から乗車するタクシーはニュージャージー州の管轄。

    ニューヨーク市内からとは違い、乗場の案内係に行先を告げると、

    エリアによって定められた料金表をもとに目的地までの運賃+荷物代を紙に書いて渡してくれる。

    実に明瞭会計だ。

     

    マンハッタンで勤務し、ニュージャージーやニューヨークの郊外に住む人間にとって、

    さらにやっかいなのが、マンハッタンからタクシーで帰宅する際の料金。

    これはなんと運転手と乗客の完全交渉制なのだ。

    ちょっと前までは乗車拒否されたのだから、乗せて行ってくれるだけありがたいのかもしれない。

    しかし場合によっては大変な出費となりうる。

     

    ある日、日本からニューヨークを訪れたお客に夕食に誘われた。

    ゆっくりと時間をかけた食事のあと、なんとかバスの最終に乗り込もうとあせる私に、

    「どこか景色の良いバーに連れてってよ。」とのリクエストが。

    やむをえずオープンして間もないホテルのバーへ。

    ようやく飲み会も終わりホテルを出ると、外はなんと雨。

    時刻は夜中の1時過ぎ。

    金曜の夜ということもあって、まだ遊び歩いている若者も多く、雨のせいでタクシーへの需要は最高潮に達する。

    ホテル付近でタクシー待ちする若者の群を避け、少し場所を移動して空車を探した。

    突然の雨で傘もなく気持ちは焦る一方だが、いくら待っても空車は来ない。

    『自慢の足』でたどり着けないニュージャージーに居を構えたことを激しく後悔しながら、ひたすら空車を待ち続けた。

    そんな中、客を乗せた1台のタクシーがウインカーを出しながらゆっくりこちらに向かってやってきた。

    「これだっ!」と思い、大きく手を振って運転手の注目を集める。

    タイミング良くその乗客は、私のすぐ近くで車を降りた。

     

    ようやく交渉開始!

    まずは運転手の窓をノックする。

    顔をのぞかせた運転手に

    「ニュージャージーのXXまで$40で行ってくれない?」と無謀な値段を提示する。

    どう見ても、目的地を把握しているとは思えない運転手だったが

    「ああ、あそこね。その値段じゃ絶対にいけないね。」と予想通りの答えが返る。

     

    行先、時間帯、天候、予想されるトンネルの渋滞、、、様々な悪条件が私の交渉をこのうえなく不利にする。

    「じゃあ$50でどう?」

    「ダメだね。見てみろよ、この天気。これなら客は他にいくらでも見つかるよ。」

     

    『雨の夜中に見つけた女の1人客』運転手にとって最高のカモだ。

    相手の考えが手に取るようにわかるだけに、ますます腹が立つ。

     

    「じゃあ$60!それなら文句ないでしょう?」

    「ダメダメ!この時間とこの天気じゃトンネルは絶対渋滞になってる。

    1時間動かないことだってあるんだ。そんなところへ$60で行けるわけがないよ。」

     

    完全に足もとをみられてる。

    「じゃあ、一体いくら欲しいのよ!」半ばやけくそになって聞いてみると

    「そうだなあ・・・ニュージャージーからじゃ、帰りに客を拾って来ることもできないから、やっぱり$80はもらわないと。」

     

    人の弱みにつけこんで、とんでもない数字を吹っかけてくる悪徳運転手。

    通常ニュージャージーから、ハドソン・リバー、マンハッタン、そしてイースト・リバーを越え

    東の果てのJFKまでリムジンを使ったとしても、こんなにかからない!

     

    しかし悲しきかな、私にはもうそれ以上粘るパワーが無かった。

    「往復のトール代(トンネル通過料)もチップも全部込みだからね!」

    と負け惜しみの念をおし、ようやく後部座席に乗り込んだ。

     

    敗北感に包まれながらも、なんとか『帰りの足』を確保した安堵感に浸る私を乗せ、

    上機嫌でくだらないおしゃべりを続ける運転手の圧勝だった。

    5/4/2005

    温湿布

    様変わりの激しいダウンタウンをフラついていて階段を踏み外し

    左足首をグルッと1回転させて着地。

    みごとに捻挫をひきおこした。

     

    そのままとぼけて散策を続行しようと歩き始めたもののやはり様子がおかしい。

    20分ほどして地下鉄乗り場への階段を下りる頃には

    かなり鈍感な私の神経もさすがに悲鳴をあげていた。

    “やっぱり今日はもうダメか・・・”

    観念して家路につくことにした。

     

    途中、怪我や病気にあまり縁のない我が家には治療するための薬が無いことに気づき

    ドラッグストアに寄る。

    日本にいる感覚で湿布剤を探すと、

    “あった!”

    『貼るタイプの湿布』だ。

    つい先日アメリカ人の友達と話をしていてこの話題が出た。

    幼少時代から祖父がペタペタ身体中に貼っていたこともあり

    私にとっては馴染みの深いこの商品を、

    新しい物好きの彼女は「最近出てきた優れ物の新商品」として誉めたたえた。

    「あれは何処にでも貼れて、臭いもほとんどないし、

     塗り薬のようにベトベト洋服につかないからほんと便利よね!」

    もっともだ。1箱買って帰る。

     

    捻挫発生後約2時間して家に着き、靴を脱ぐ頃には

    くるぶしが赤ん坊のゲンコツほどに腫れあがっていた。

    早速購入してきた湿布剤を患部に貼る。

    “冷たくて気持ちがいい・・・”

     

    次の日は朝から仕事でまたマンハッタンを歩き回った。

    なんとか用事をすませて帰宅し、

    何回目かの湿布交換をしようとして初めてそれが最後の1枚だと気づいた。

    “これでは夜寝る前に貼りかえるものが無い。”

    無理をしたせいか、患部の腫れと痛みはますます悪化しているように見える。

    どうしたものかと悩んでいたとき思い出した。

    “そういえば、アレがあった!”

    やはり『貼るタイプの湿布剤』だ。

    だがこの商品。部分的に楕円形のふくらみがあり、

    その中にはあの『ホカロン』の中身のような黒い砂状のものが入っていて

    患部を温める『温湿布』。

     

    無知な私はまだ熱をもつ患部にしっかりとコレを巻きつけ、

    “なんだか熱いな”と思いつつ、そのまま床に入った。

    その夜、暑さでうなされる夢を見たあと翌朝患部を確認すると

    どす黒く変色して腫れあがった患部が、足の甲から指のつけ根まで広がっていた。

     

    “捻挫には安静第一”だの“最初は冷やし、熱がひいたら温める”と知った時にはあとの祭り。

    完治するまで随分時間がかかってしまった。

     

    しかしこのアメリカ版『温湿布』。

    関節の痛みや筋肉痛などにも効くようだが、

    動きまくる私の足に一晩ピッタリ貼り付いていた粘着力を考えると、

    極寒のニューヨークでもまだ市販されていない

    『貼るタイプの使い捨てカイロ』としても十分役立つように思える。

     

    続々と便利な新商品が出てくる日本の市場に比べ、

    この超大国アメリカにはまだ『あったら便利なのに無い』ものが多いのが常々不思議だ。